No.35 エコロジストの挑戦(12) 「日本の庭はエコロジカル」
日本の庭。たとえば茶室の庭は、しっとりと落ち着いた雰囲気、日常の喧騒から逃れられる快感、さりげない季節感を体感できるすばらしさなどなど、素材の持ち味が肌にしっくりとなじみ、日本人にかぎらず誰でも「なんて素敵!」と思うはずです。 ところで、茶室に使われている建築材料は木、竹、土、和紙、葦、萱、藁、井草、石、瓦などで、最後は全部土に戻るものばかりです。庭の材料もまたしかり、石、砂利、砂、木、竹、水などです。 そして古瓦や石臼、灯篭や手水鉢、また銘石といわれる石などは何度も何度もリユースされて、何百年も使い続けられています。それは本物を代々受け継ぎ大切にすることによって、時間による経年変化の美を感じ取ることです。いずれ形あるものは風化し、朽ちるという日本人独特の無常観から、価値観が研ぎ澄まされていくということではないでしょうか?
建物も庭もすべての材料が使い切られて寿命がなくなったときには土に戻り、ゴミ(産業廃棄物)となるものがないなんて、ほんとうにエコロジカルです。こういうものを作り上げた日本人ってすばらしいですね。
さて、専門家に頼んで茶室や茶庭をつくることができなくても、本物の材料を使って庭を作ることができます。日本の伝統の庭から素敵でエコロジカルなパーツを集めてきて、自分のオリジナリティあふれる庭を自分で作ってしまえばいいのです!
伝統の日本庭の延段
新感覚の園路
延段は飛び石より歩きやすく、幅を広くすることによって車椅子でも楽に通れるユニバーサルデザインとしても応用できます。伝統的には平たい大きな石と小さな石の組み合わせだったりしますが、平らにさえできれば何を使ってもいいのです。枕木だったり、古レンガ、タイルの破片、庭から出てきた小石も敷き詰められます。
垣根も自分で庭にあるものや廃材で作ることができます。
←芝土塁:芝マットと土をサンドウィッチします。
↓竹垣(四つ目垣)シュロ縄と竹と棒杭があればできます。
剪定した太い枝を門として使う
植木屋さんが剪定した家の木や街路樹や公園の太い枝は、いただいておきましょう。できれば150cmくらいに2本切ってもらっておくとあとが楽です。土を50cmくらい深く掘って木を立てておくだけでも1mの高さの門柱ができます。とても風情のある、日本風にいうと「結界」ができあがります。作り方しだいで、洋風の庭にももちろん合います。美しくデザインされた鉄扉もいいのですが、剪定されて命を絶たれ、ゴミとして捨てられる運命にあった木がもう一度庭に戻って役立つことができるなんて、木も喜んでいると思いませんか?なんて素敵なことでしょう!
庭に水場があるといろいろな生物、カエル、トンボ、カナヘビ、小鳥などが集まり、自然にビオトープができます。いろいろな生物にとって心地よい空間は、われわれ人間にとっても心地よい空間になるのです。 いらなくなった大きな植木鉢は底の穴を防水セメントでふさぎましょう。少々もれても雨水ならもったいなくないし、地面に水がしみるだけなので問題ありません。また、物置に転がっている使わなくなった壷、甕、瓦、土鍋、ボールなどをリユースしましょう。 茶庭の手水鉢の配置を参考に作りましょう。雨樋の水をうまく誘導して溜められればされに水の節約になるし、塩素消毒していない水は生物にも優しいのです。排水は浸透枡(底に抜けていて、小石が詰まっている)を作って地下に戻しましょう。やがて、長い年月をかけて、地下水としてよみがえってくれるからです。
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