静水舎 一級建築士事務所
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No.36 エコロジストの挑戦(13) 「秋風の草花

秋風に揺れる風情

桔梗

お盆を過ぎると、急に朝晩が涼しくなり、秋の気配が濃くなります。裏山の草刈り跡や道端で風に揺れていたワレモコウ、マツムシソウ、キキョウ、リンドウ、オトギリソウ。そして、十五夜のお団子と一緒にお供えしたススキをはじめとした秋の七草、ハギ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、クズ、フジバカマ、オミナエシ。どれもこれも涼しい秋風に優しく揺れる風情がいいですね。いろいろ改良された園芸種も華やかでいいのですが、わたくしは野原で風に揺れていた自生種の、花数も少なく花色も少ない秋の草花が好きです。

秋の七草は、ハギを除いて、すべて宿根草です。古から現代まで愛されてきた草花には、それぞれ花をめでるだけではない植物の利用方法がありました。どれもこれも美しいだけではなく、人の役にも立っていけるけなげな草です。

 

秋の草の効用

竜胆

ハギは落葉低木で草ではないのですが、ススキの原に群生する紫紅色の秋の代表的な花です。根、茎、葉を乾燥して煎じて薬用のお茶として飲むことができます。

ススキは萱とも呼ばれ、かやぶき屋根の材料として長いこと、そして現在も屋根材として使われています。

河原撫子

キキョウの花期は7月から9月。青紫色の釣鐘型の花をつけます。その太い根が韓国ではトラジと呼ばれ、漬物や料理にたくさん使われています。3年以上たった根は漢方では桔梗根として、喉の痛み止め、去痰に使われます。

カワラナデシコの花期は8月から11月。淡紅色の、たくさん裂けた花びらの可憐な花を咲かせます。薬用としては干した種子を煎じて飲むと、むくみや利尿に効きますが、妊産婦には向かないそうです。

クズは豆科のツル草です。7月から9月、紅紫色の蜜の香りがいっぱいの、フジの花を上向きにしたような花が咲きます。たんぱく質に富む葉は家畜のえさに、ツルは繊維として縄に、根は吉野葛として料理や菓子に使われています。風邪の初期症状には葛根湯がよく効きます。

女郎花

フジバカマはキク科です。花期は8月から9月、淡紅紫色のふわふわした花を咲かせます。
刈り取って半渇きにすると桜餅のようなクマリン(※1)の甘い香りが出てきます。薬用としては乾燥した全草を入浴剤として使い、皮膚のかゆみをとります。

オミナエシは、8月から10月に黄色の粟粒のような花が傘状に広がって咲きます。薬用としては乾燥した根を煎じて飲むと利尿に効きます。

吾亦紅

これらの秋の七草に加えて、わたくしの大好きなワレモコウとオトギリソウです。ワレモコウはバラ科。花期は8月から10月、ぎざぎざの葉の形も個性的ですし、赤紫色の坊主頭のような花もなんともユーモラスです。薬用としては干した根を煎じて外傷ややけどに塗ります。また下痢止めにも服用します。

オトギリソウの花期は7月から9月、黄色の星のような花です。生葉を揉んで傷につけます。茎や葉を油につけたり、アルコールでチンキ剤にすると水虫にも効きます。同じ種のセイヨウオトギリソウは英名をセントジョーンズワートといい、オルターナティブ医療(※2)として使われ、ウツ、ストレス、不眠症に効くことがわかってきました。

※1 桜の葉の塩漬けや干草の香りがクマリンで、植物に広く含まれている。 
※2 オルターナティブ療法。西洋医学の対症療法と先人の残した効果的な自然療法を組み合わせて治癒率のアップを計る、代替療法ともいう。


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