NO.33 エコロジストの挑戦(10)
バリアフリー・エコガーデン だれにとっても安心でくつろげる美しい庭です
毎日の生活の中で、子どもたち、障害者、高齢者の人たちがごく普通に使うことができる安全な庭。それは誰にとっても安心でくつろげる美しい庭です。安全であるということは、機能的な面ばかりでなく環境ホルモン物質や危険な揮発性化学物質を出すガーデン資材を使わないこと。また、いつかは土に戻り、産業廃棄物(ゴミ)にならない資材を使うことでもあります。
K邸の庭をつくるきっかけになったのは、水泳で腰を傷められたK氏と、近頃とみに足腰が弱って転倒しやすくなったK氏の奥様が毎日使われる玄関アプローチの改善でした。8センチほどの段差が続くアプローチは、幅こそ広いのですが、うっそうとした南側の樹木により薄暗くなり、床が黒っぽい仕上げで段差が見えにくく、手すりもありません。
そこで、明るい段差のないスロープのアプローチとドライな庭をつくることにしました。アプローチ際にはロックガーデンをつくり、株立ちのコハウチワカエデを中心として可憐な山野草を多品種植え込み、いつも何かの花が咲いているようにと考えました。
メインの素材は温かい質感と手触りの土壁とタタキにしました。壁やタタキのところどころから藁スサが突き出して優しい自然素材を感じます。 ドライな庭では、花壇の面積を少なくして、かがんでする草取り作業などが少なくてすむようにしました。 あちこちに分散させた花壇には、ときどき骨董の壷や、花入れに花を生けるK氏と、花に詳しい奥様のために四季それぞれ咲く特徴ある花や長期間次々と咲く花類を植えました。 骨董の古い花瓶には、とりわけ下向きに楚々と咲く白や浅黄色のアブチロンがよく似合うそうです。 樹は、花が咲き実のなる木をできるだけ植えています。たわわに実をつける太いオリーブの木の植木鉢を2カ所ベンチ脇に置き、中心のサークル花壇にはジューンベリーの株立ち、塀際の花壇には班入りのミカンの木、木庭との区切りにはブルーベリー(ティフブルー4本、ホームベル4本)の垣根があります。 今年は豊作でした。
建物側の日陰になりやすい花壇は班入りアオキで明るくして、カシワバアジサイ、班入りアブチロンなどの下に班入りギボウシやグランドカバー類を植えて、草が生えないようにしています。
塀際の日当たりのよい花壇には既存のバラやボケのあいだにニンジンボク、白モッコウバラ、スモークトゥリーの小さな木を入れ、グランドカバーにはよい香りのするハーブ類、キャットミント、アルケミラモリス、セージ類、タイム、クリスマスローズなどが植えてあります。
中心のサークル花壇には株立ちのジューンベリーの足元に、大きな株になるススキではなくレモングラスを植え、班入りアマドコロ、班入りセキショウ、フウロソウ、背の低いオミナエシなどを植えて、野鳥や蛙のために焼物の水盤を置いています。
アプローチの手すりつきの壁の花壇は、冬、日当たりがよいので、いまはビオラやガーデンシクラメンが咲き誇っています。庭全体にもさりげない手すりをつけ、必要なときにはつかまることができるようにしてあります。
化学農薬をまかないので、鳥、蜂、虫類と、居心地のいい場所を一番に見つける猫がよくきます。冬の日差しの中、タタキに気持ちよさそうに寝転んでいます。
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