NO.31 エコロジストの挑戦(8) 植物の力でつくる自然農薬
最近の研究では、有機リンの微量中毒によって、脳神経や交感神経、免疫系ホルモンに悪い影響を与えることが明らかになっています。現在、低毒性であるといわれている有機リン系農薬には、アオムシやカイガラムシ退治に使われるマラソン、喘息のアレルゲンのダニを退治する薬に使われているスミチオン、電気掃除機の紙パックや絨毯の防虫剤に使われているダイアノジン、吸汁性害虫退治に使われるフェンチオンなどがありますが、この低毒性とは急性毒性が低いということで、毒性がないということではありません。長期間にわたって、致死量の数万分の一を体に取り込むことによって、体が震える、ふらつく、よだれがたれるといった自律神経系の症状が出る慢性毒性が出現する場合があります。
慢性中毒症状として、近視、乱視、瞳孔や眼球反応の異常、めまいなどのほかにも、耳鳴り、四肢の痺れ、脳、心臓、腎臓の異常、手足の冷え、下痢、便秘、疲れやすさなどがあります。摂取した有機リンの量にかかわらず、症状の出る出ないは人によって違います。しかし、症状が出ないからといって長期間にわたって使用し続けると、人間の体の耐性には限界があって、やがて、糖尿病、肝臓病などが起こってくることがあります。このような危険性を内包する農薬を自分の家族が暮らす家の庭に撒いてもよいものでしょうか?
←トウガラシ
家族の健康を考え、なるべく自然な方法で病害虫を減らすのがこれからのエコロジカルガーデンのあり方です。植物でつくる自然農薬は、化学農薬のように病害虫がすぐに死んだり、挫創が魔法のように消えるわけではありませんが、続けて使っているうちに植物が元気になり、病害虫もいつの間にか消えているという効果があります。その上、自分の体に変調をきたさせたりしないし、環境汚染の心配もありません。
さて、日本では、今から300年も昔に、害虫防除についての技術が確立されていました。もちろん、合成化学農薬のない時代ですから、自然の鉱物や植物を使っていました。バイケイソウ、セキショウ、センニンソウ、クララ、アセビ、タバコ、センダン、アリタソウ等の煮出し汁、浸出液、くん煙等で病害虫駆除をしていました。ただし、これらの植物は高い毒性を持っているため、植物由来だからといっても危険性があるということを知っておきましょう。
今回は、身近にある食品のトウガラシ、ニンニク、手に入れやすいヨモギ、ドクダミを使った自然農薬の簡単な作り方をご紹介します。ほかにも、自然農法家の方々がたくさんの自然農薬をこしらえていますが、とりあえず手近なものでひとつ、ふたつ、作って試してみることが大事だと思います。分量、使い方とも目安でしかありません。気長に自分の庭にあった方法を見つけ出していく気持ちが大切です。
←ドクダミ
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